2022.03.06 住宅
いつの時代も職人さんの手仕事がある
家が完成するまでにはたくさんの工数があり、多くの職方が関わる。一品生産の建築工事は住宅といえども数か月の工事期間を要し、工業化が進んだ今も職種ごとに職人さんの手仕事がある。その手が作り出す形態は出来栄えを大きく左右し、時には家の寿命までも決めてしまうことだってある。長年の仕事の中つくられた手が順序良く流れるように仕事を納めてゆく。屋根の板金仕事はかつては瓦棒、今はタテハゼが主流になり写真は棟納めの様子、図示のディティールと実際の施工が確認できるので時にちょっとお邪魔して仕事の様子を見せてもらう。
2022.02.27 建築
設備の取出し/見えないところを丁寧に
壁面の電線管と配線の取出し状況である。透湿防水シートの貫通部位の水の進入防止の処置で、防水テープを貼った上からシームレス材で巻いてある。ここまでやっておけば万が一壁仕上の裏面に水が回っても一応の安心感があり、壁面内部への水の進入は防ぐことができるだろう。また防腐処理のされた横胴縁は20cm程度ごとに通気を兼ねた水抜きのスリットがある。よく配慮がなされた丁寧な仕事である。ややもすると透湿防水シートを張る意味を理解しないまま壁を貫通して、そのまま何の処置もせずに仕上面のシールでおしまいってことがある。そこまではないにしても「ヤリマシタだけ」のルーズな仕事は日常茶飯事、職方の仕事に対する心構えやちゃんとした施工管理、それと注意を喚起する監理の目線が欠かせない。見えるところ丁寧にするのは当たり前、見えないところをきっちり仕舞う施工者を選びたい。
2022.02.23 建築
板塀のコト/隣地からも美しく
板塀の納まりを考えるとき、支持をどうするか。金属の支柱で足元をコンクリートに埋め込んで固定するのが一般的だが、全て木で納めたい時はバットレスを付けるというのが古来のやり方で、これだと片方に出っ張りが生じる。それも嫌だなあって思っていたら、道すがら目に留まったのがこの大和塀で、スッキリと設えている。支持の角材を等間隔に置いて、基礎のコンクリートと塀の木支柱をステンボルトで縫い付けている。これだと出っ張りがないから、表裏関係なく取り付けることができる。ただコンクリート基礎の立上りは必要だが。オール木なので経年変化による木の風情が楽しめて、年数を経てもう終りかなって時は土に還り環境負荷が少ない。この板塀、とある製材・材木店の塀で、敷地内には商品の木材が整然と積まれていた。
2022.02.20 住宅
床材について/スリッパは要らない
日々の暮らしの中で一番人の肌と触れるのが床だと思います。ぼくは知識が乏かった若い頃、木質の床板と言えばWPC加工された表面に薄い松などのヘギ材が貼られている合板系のものを使っていました。この建材は木に似せたプラスチックと言っていう代物で、木の特質である吸湿性が無くて夏場に歩くと不快きわまりなくスリッパが必要でした。今は特別の事情がない限りは使いません。写真は熱圧加工したスギ30mmの厚板にリメイクした住宅で、素足の歩行感がすこぶる足にやさしい一押しの材料です。柔らかいのでキズはつきやすいですが時の経過と共に気にならなくなります。また少し固めの質感を求めるのであれば、ヒノキやカラマツが良いでしょう。地マツは固く水にも強いので捨てがたいですが、今はちょっと手に入りにくい。いずれにしても工業的な加工を施さない無垢材です。日本にたくさんあるスギやヒノキを使ってお家をつくることで、日本の山(自然)を守り生活の質(QOL)を豊かにしてくれます。
2022.02.19 建築
数十年を経た床下を見ると
構造体は健全に保たれていました。まずは安心。ここのところの建物調査で普段は目にすることのない床下や天井裏を点検することで、建築当時の様子を伺い知ることができて興味深いものがあります。コンクリート基礎や下地の木材は劣化もなく良好ですが、建築当時の清掃は不十分だったようですね。カンナくずやノコくずをとらないまま床を伏せ込んだようです。今は床下環境を活かす造りもあって工事の残渣がある状態での引渡はあり得ません。いつの時代も良質な仕事は見えないところを大切にします。